オープンソース音楽生成AI「ACE-Step 1.5」リリース。RTX 3090で10秒未満、商用利用可能
高品質な音楽生成AIが、ついにローカル環境で手の届く存在になった。オープンソースの音楽生成モデル「ACE-Step 1.5」が公開され、RTX 3090でフルソングを10秒未満で生成可能とされている。最大の特徴はMITライセンスの下で商用利用が許諾されている点で、個人開発者やスタートアップにとって魅力的な選択肢となり得る。ただし、Sunoのような統合型サービスが提供する高度な音楽性や直感的なUIを求める一般ユーザーには、まだハードルが高い可能性がある。
ACE-Step 1.5とは:ローカル実行と商用利用を両立した音楽生成モデル
ACE-Step 1.5は、テキストプロンプトから音楽を生成するAIモデルだ。公式のHugging Faceリポジトリによれば、このモデルは「商用利用が可能」と明記されており、MITライセンスの下で提供されている。これは、生成した音楽を自社サービスや製品に組み込む際の法的リスクを大幅に軽減する重要なポイントである。
技術的な特徴として、ComfyUIのブログ記事によれば、4GB VRAM以下の消費者向けGPUでも動作するように最適化されている。具体的には、AMDのブログ記事では、Ryzen AIやRadeon GPU上での商用グレードの音楽生成が可能であることが示されている。これにより、高性能なクラウドサーバーを借りることなく、ローカルマシンで音楽生成の実験やサービス開発が進められる環境が整った。
導入とセットアップ:Hugging FaceとComfyUIから利用可能
ACE-Step 1.5を利用する主な方法は二つある。一つは、AIモデルプラットフォームのHugging Faceから直接モデルをダウンロードし、Python環境で実行する方法だ。もう一つは、ビジュアルプログラミングインターフェースで知られるComfyUI用のカスタムノードとして利用する方法である。ComfyUIのブログによれば、ACE-Step 1.5用の専用ノードが利用可能になっており、ワークフローに組み込んで他の画像生成AIなどと連携した創作が可能になる。
ローカル環境へのインストールは、一般的なオープンソースのAIモデルと同様の手順となる。Hugging Faceのリポジトリからモデルファイルを取得し、必要なPythonライブラリ(PyTorchやTransformersなど)をインストールする。推論に必要なVRAMが少ないため、多くのゲーミングPCや中古のGPUを搭載したマシンで試すことができる点が導入のハードルを下げている。
具体的な使い方:プロンプトと生成の実際
実際に使う際は、テキストで音楽のジャンル、雰囲気、テンポ、使用楽器などを指示するプロンプトを入力する。例えば、「アップテンポのシンセポップ、明るいメロディ、電子ドラムとベースライン」といった具合だ。公式情報によれば、50以上の言語に対応しているため、日本語でのプロンプト入力も可能である。
生成はコマンドラインやスクリプトから実行する。推論が完了すると、WAV形式などのオーディオファイルが出力される。生成時間はハードウェアに依存するが、AMDのブログ記事で言及されているように、適切なハードウェア環境下では非常に短時間で曲が仕上がる。生成された音楽は、そのままメディアコンテンツのBGMとして使用したり、さらにDAW(Digital Audio Workstation)で編集・リミックスしたりするといった活用が想定される。
想定される活用シーン:開発者とクリエイターの新たなツール
このモデルの登場が最も影響を与えるのは、個人開発者や小規模なスタートアップだろう。MITライセンスによる商用利用の許諾は、ロイヤリティを気にせずに自社のゲーム、動画編集アプリ、デジタルコンテンツ制作ツールなどに音楽生成機能を組み込むことを可能にする。例えば、ユーザーがテキストを入力するだけでゲーム内BGMを自動生成する機能や、プレゼンテーション動画用のBGMを即座に作成するツールの開発が現実的になる。
また、音楽制作やメディアアートに携わるクリエイターにとっては、アイデアスケッチや素材作りを高速化する「創作のパートナー」としての利用価値がある。ローカルで動作するため、生成回数に制限がなく、試行錯誤を気兼ねなく繰り返せる点も大きな利点だ。
既存サービスとの比較:Suno vs. オープンソースモデル
音楽生成AIといえば、Sunoが高い完成度と認知度で市場をリードしている。Sunoはウェブブラウザやアプリから直感的に使え、生成される音楽の質も非常に高い。しかし、生成回数に制限があったり、商用利用に関するポリシーが明確でなかったりする側面がある。
これに対し、ACE-Step 1.5は「オープンソース」と「ローカル実行」が全ての違いを生む。利用制限がなく、生成した音楽の所有権と商用利用権が明確(MITライセンスに従う限り)であり、インターネット接続が必須ではない。その代償として、ユーザー自身が環境構築を行い、プロンプトの調整などにより生成品質をコントロールする必要がある。つまり、Sunoは「完成品を手軽に楽しむサービス」であり、ACE-Step 1.5は「自らカスタマイズし、製品に組み込むためのツール」という位置付けだ。
まとめ:誰が使うべきか
ACE-Step 1.5は、技術的な好奇心と実用性を兼ね備えた開発者、ローカル環境でのAI実験を好む研究者、そしてコストと法的リスクを抑えながら自社サービスにAI音楽生成を組み込みたいスタートアップにこそ刺さるツールである。低スペックハードウェアでの動作と商用利用の許諾は、これまで高価なAPIやクラウドサービスに頼らざるを得なかった層に新たな選択肢を提供する。
一方で、「とにかく簡単に高品質な音楽が欲しい」という一般ユーザーや、音楽制作の深い知識なしにプロ級の楽曲を求めているクリエイターにとっては、Sunoのような統合サービスの方が依然として優れた体験を提供するだろう。ACE-Step 1.5のリリースは、音楽生成AIの民主化における重要な一歩であり、今後、オープンソースコミュニティによる改良や派生モデルの登場がさらにエコシステムを活性化させる可能性を感じさせる。
出典・参考情報
- https://blog.comfy.org/p/ace-step-15-is-now-available-in-comfyui
- https://arxiv.org/html/2602.00744v1
- https://artintech.substack.com/p/ace-step-15-explained
- https://www.amd.com/en/blogs/2026/commercial-grade-ai-music-generation-on-amd-ryzen-ai-and-radeon-ace-step-1-5.html
- https://huggingface.co/ACE-Step/Ace-Step1.5
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