GitHub Actionsの代替「Blacksmith」、コスト最大75%削減・処理速度2倍の実力


GitHub ActionsのCI/CDコストと実行時間に課題を感じている組織開発者にとって、設定1行の変更でそれらを大幅に改善する新たな選択肢が登場した。それが「Blacksmith」だ。公式情報によれば、コスト最大75%削減、処理速度2倍向上という実力を示し、既に600以上の組織が導入を決めている。ただし、個人リポジトリには対応しておらず、小規模な個人開発者には現時点で直接の恩恵はないサービスと言える。

1行変更で始まる、驚くほどシンプルな導入

Blacksmithの最大の特徴は、その導入の容易さにある。既存のGitHub Actionsワークフローを大規模に書き換える必要はない。Zennの記事によれば、必要な変更はワークフローYAMLファイル内のruns-onの値を、GitHubが提供するランナー(例: ubuntu-latest)から、Blacksmithが提供するランナー(例: blacksmith-ubuntu-latest)に置き換えるだけだ。これだけで、ジョブの実行環境がGitHubのインフラから、Blacksmithが最適化したクラウドインフラに切り替わる。

このアプローチは、ロックインリスクを最小限に抑えつつ、気軽にパフォーマンスを試せる点で優れている。効果が感じられなければ、元の値に戻すだけでGitHub Actionsに即座に戻れる。移行コストがほとんどかからないため、技術的負債を生むことなく、新しいテクノロジーを評価できるのは開発チームにとって大きなメリットだ。

圧倒的なコスト削減と速度向上の実態

では、その「1行の変更」がもたらす具体的な効果はどの程度なのか。複数の技術ブログによる実例や公式の主張を総合すると、その効果は顕著だ。

まずコスト面では、AP通信社の技術ブログの事例では、月額約160ドルかかっていたGitHub Actionsの利用料が、Blacksmith導入後は約40ドルに削減されたと報告されている。これは75%の削減に相当する。Blacksmithのビジネスモデルは、主要クラウドプロバイダーの未使用容量(スポットインスタンス)を効率的に活用することで、GitHubよりも低い単価で計算資源を提供できる点にあるとされる。

次に速度だ。BaseMachinaの技術ブログによれば、CPUバウンドな処理ではGitHub Actionsと比較して約2倍の速度向上が見込めるという。特に差が大きいのはDockerビルドで、同じ記事では最大40倍の高速化が報告されている。また、キャッシュのダウンロードも約4倍高速とのこと。CI/CDの待ち時間、特に大規模なコンテナイメージのビルドに時間を取られているチームにとって、この差は開発フローの体感速度を一変させる可能性がある。

inline

組織開発に特化した設計思想

現在、Blacksmithが対応しているのは「組織(Organization)」が管理するリポジトリのみで、個人(Personal)リポジトリには対応していない。この制限は一見デメリットに思えるが、サービスが解決しようとしている核心的な課題を考えると合理的な選択だ。

CI/CDコストの肥大化と実行時間の長期化は、個人開発というより、数十〜数百のリポジトリを抱え、日々何百ものワークフローを実行する中・大規模な開発組織において顕在化する問題である。Blacksmithは最初からそのような組織の課題に集中することを選択し、機能開発やサポートリソースを集中させている。実際、2023年に創業し、2024年にはGoogle Venturesがリードするシードラウンドで350万ドルの資金調達を完了しており、企業市場への本格的な取り組みが窺える。

GitHub Actionsとの比較と移行判断

BlacksmithはGitHub Actionsの完全な代替を謳うものではなく、あくまで「実行環境」の高性能な代替プロバイダーという位置付けだ。そのため、GitHub Actionsの豊富なアクションエコシステムや、GitHub本体との深い統合(プルリクエストとの連携など)はそのまま享受できる。失うものはほとんどなく、得るもの(速度とコスト削減)が大きいという構造が、600組織以上が導入を決断した背景にある。

ただし、注意点もある。スポットインスタンスを活用する性質上、極めて稀ではあるが実行環境が突然終了(割り込み)される可能性はゼロではない。また、現時点ではセルフホストランナー的なカスタマイズ性には限界がある。これらの点は、GitHubが提供するマネージドな安定性と天秤にかける必要がある。

誰が導入すべきか? 総合評価

Blacksmithは、GitHub Actionsを組織で利用し、毎月の利用料の増加や「CIが遅くて開発が止まる」という体験に悩む開発チームに強く推奨できる。導入のハードルが極めて低く、リスクが少ない中で大きなリターンが期待できる、希有なサービスと言える。特にDockerを多用するマイクロサービスアーキテクチャや、頻繁にキャッシュをクリアする大規模モノリスの開発では、その効果を如実に感じられるだろう。

逆に、個人リポジトリのみを利用する開発者や、現在のCI/CD環境が十分に高速でコストも問題ないチーム、あるいは極めて複雑にカスタマイズされたセルフホストランナー環境に依存しているチームにとっては、現時点で急いで移行する必要性は低い。Blacksmithは、組織開発におけるCI/CDの「コストパフォーマンス」という一点に鋭く特化したサービスなのである。

出典・参考情報

cloud9 Written by:

Be First to Comment

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です