Claude、Supabase、Vercel… 投資家が明かす「2024年、スタートアップが選ぶべき開発スタック」
投資家であり起業家でもあるSahil Bloom氏が、自身のX(旧Twitter)アカウントで現在推奨する開発スタックを公開した。AIコーディング支援からデプロイ、決済、監視まで、開発の全工程をカバーする12のツール群は、少人数で短期間にプロダクトをローンチしたい現代のスタートアップや個人開発者の「理想の道具箱」を具現化している。ただし、この「ベスト・オブ・ブリード」なSaaSの組み合わせは、大規模なレガシーシステムや特定のクラウドベンダーに深く依存する環境では、その真価を発揮しにくいかもしれない。
開発スタックの全体像:AIコーディングから運用までを一気通貫
Sahil Bloom氏によれば、公開された開発スタックは以下の12のツールで構成されている。このリストは、コードの記述から本番環境での運用・分析まで、プロダクト開発のライフサイクルをほぼ網羅している点が特徴だ。
- Claude: AIによるコーディング支援
- Supabase: バックエンド(データベース、認証、関数など)
- Vercel: フロントエンドのデプロイとホスティング
- Namecheap: ドメイン取得
- Stripe: 決済処理
- GitHub: バージョン管理
- Resend: トランザクションメール送信
- Clerk: ユーザー認証・管理
- Cloudflare: DNS管理
- PostHog: 製品分析
- Sentry: エラー追跡
- Upstash: Redisサービス
スタックから読み解く、2024年の開発トレンド
このスタックは単なるツールの羅列ではなく、現在の開発現場で重視されている価値観を反映している。第一に、開発速度と開発者体験の最優先だ。自前でサーバーを構築・管理する代わりに、SupabaseやVercelといったマネージドサービスを組み合わせることで、インフラの複雑さから解放され、本質的なプロダクト開発にリソースを集中できる。
第二に、AIツールの開発ワークフローへの深い統合である。Claudeがスタックの筆頭に挙げられていることは象徴的で、コード生成やレビュー、リファクタリングにおいてAIが「最初に相談するパートナー」として定着しつつある現状を示している。
第三は、「成長」を視野に入れたツール選定だ。単に動くものを作るだけでなく、ローンチ後のユーザー行動分析(PostHog)、安定性の確保(Sentry)、そして収益化(Stripe)までが最初から設計に組み込まれている。これは、MVP(Minimum Viable Product)の先にあるスケールを前提とした、現代的なスタートアップ開発のアプローチと言える。
モノリシック・クラウドからの脱却とその意味
従来、新規プロジェクトではAWS、Google Cloud、Microsoft Azureといった大手クラウドプロバイダーを選択し、その中で提供される多様なサービスを組み合わせてシステムを構築するのが一般的だった。しかし、Bloom氏のスタックはこれとは対照的だ。各工程において、その領域で「最高の開発者体験」を提供する専門SaaSを選択し、それらをAPIで接続する「ベスト・オブ・ブリード」アプローチを取っている。
この変化の背景には、クラウドネイティブ技術の成熟と、開発者にとっての「抽象化」の要求がある。クラウドベンダーの提供するサービスは強力だが、設定や管理の学習コストが依然として高い。一方、Supabase(Firebaseのオープンソース代替として注目)やVercelのようなサービスは、特定の機能に特化し、驚くほどシンプルなインターフェースと優れたドキュメントで開発者を惹きつける。スタートアップの初期段階では、技術的な柔軟性よりも、いかに早く市場に検証可能なプロダクトを届けるかが生命線となる。このスタックは、まさにその要請に応えるものだ。
今後の展望:統合とスケールの課題
このようなモダンな開発スタックは、プロトタイピングや初期ローンチにおいて圧倒的な効率を発揮する。しかし、プロダクトが成長し、ユーザー数やデータ量が増大するにつれて、新たな課題も浮上する可能性がある。複数の外部SaaSに依存することによるベンダーロックインの分散化、コストの積み上げ、そして各サービス間の連携障害のリスクだ。
今後は、このような「組み合わせ型スタック」をいかにして大規模な運用に耐えうる堅牢なアーキテクチャに進化させていくか、あるいは、ある段階で一部の機能をより統合的なプラットフォームに移行する判断をどう下すかが、採用チームの重要な検討事項となるだろう。それでも、開発の民主化と高速化を推し進めるこのトレンドは、2024年においてもスタートアップ開発のスタンダードであり続けると予想される。Bloom氏のリストは、その現在地を明確に示す一つの指標となっている。
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