TidewaveがNext.jsとViteのサポートを発表、Vite 8 Betaの高速化も追い風


クラウドプロバイダーのTidewaveは、Next.jsアプリケーションをViteでビルドし、自社プラットフォームで実行するサポートを開始した。これにより、開発者はNext.jsの開発者体験(DX)を維持しつつ、ビルドツールとデプロイ先の選択肢を広げられる可能性が出てきた。ただし、これはNext.js本体の機能変更ではなく、Tidewaveによる独自実装である点が最大の注意点だ。

Tidewaveが提供する「Next.js with Vite」ソリューション

Tidewaveの公式ブログによれば、同社は2025年11月13日、Next.jsとReactアプリケーションに対するViteベースのビルドおよびデプロイ環境の提供を発表した。このソリューションの目的は、Next.jsの優れた開発者体験を「ベスパーク(特定仕様)なツーリング」に依存することなく、高速かつ安全に実現することにあると説明されている。

具体的には、開発者がNext.jsで書かれたアプリケーションのコードをTidewaveにデプロイすると、同社の環境が内部でViteを用いてビルドを実行する。これにより、従来のNext.js標準のビルドプロセスではなく、Viteのビルドパイプラインを経てアプリケーションが生成・提供される仕組みだ。Tidewaveは、このアプローチが「ロックインとコストからの解放」につながると訴求している。

背景に迫るVite 8 Betaの性能向上

TidewaveがこのタイミングでViteベースのソリューションを打ち出した背景には、ビルドツール「Vite」自体の進化がある。Vite公式ブログによれば、現在ベータ版が公開されている「Vite 8」では、Rust製の高速バンドラーであるRolldownが統合され、ビルド性能の大幅な向上が図られている。Vite 8 Betaは、従来のesbuildに加えてRolldownを採用することで、大規模プロジェクトにおけるバンドル速度の改善を実現しており、この高速化がNext.jsアプリケーションのビルドにも有益であると判断されたと推察される。

一方で、Next.js公式がViteをネイティブサポートする動きは、現時点では限定的だ。GitHubの公式ディスカッションを見ると、過去からViteサポートに関する開発者からの要望は存在するものの、Next.jsチームによる本格的な実装は行われていない。Tidewaveの今回の発表は、この「公式サポートを待てない」というニーズに応える、一種のワークアラウンド(回避策)的な側面を持っている。

「解放」の意味と開発者エコシステムへの影響

このニュースが一部で「Next.js Liberation Day」と表現されるのは、主に二つの「解放」を意味している。第一は、ビルドツールの選択肢からの解放だ。Next.jsはその強力な機能と引き換えに、内部のビルドシステム(かつてはwebpack、現在はTurbopack)に強く結びついてきた。Viteという業界標準に近い高速なビルドツールを選択可能にすることは、開発者の技術スタックの自由度を高める。

第二は、デプロイ先のプロバイダーからの解放である。Next.jsアプリケーションを最高パフォーマンスで運用するには、Vercel(Next.jsの開発元)へのデプロイが事実上最適化されている。Tidewaveは、Viteという共通基盤の上でNext.jsアプリを動作させることで、Vercel以外のクラウドプロバイダーでも同様の開発者体験とパフォーマンスを提供できる可能性を示した。同社は他のプロバイダーとの連携も進めると表明しており、マルチクラウド戦略を取るチームにとっては興味深い動きと言える。

採用を考える上での注意点

このソリューションの導入を検討する際には、いくつかの技術的リスクを認識する必要がある。最大の点は、Next.jsの非公式なビルド方法を採用することになるため、Next.js本体のアップデートに追従できる保証がないことだ。Next.jsが新機能をリリースした際、TidewaveのViteビルドパイプラインが即座に対応できるとは限らない。また、Viteでビルドした場合、Next.jsが提供するサーバーサイド機能(一部のAPI Routeやサーバーコンポーネントの挙動など)が完全に互換性を保って動作するか、詳細な検証はこれからとなる。

したがって、現状ではViteの高速ビルドを切実に必要とし、かつデプロイ先の多様性を重視する先進的なチームが、リスクを承知で試すケースが想定される。逆に、現行のVercel/Next.js環境で問題がなく、安定性と公式サポートを最優先するプロジェクトでは、Next.js本体のViteサポートの進展を待つ方が無難な選択肢だろう。

今回のTidewaveの発表は、成熟しつつあるNext.jsエコシステムにおいて、デファクトスタンダードへの一極集中に一石を投じる試みだ。成功するか否かは、その技術的完成度と、どれだけ多くの開発者・企業が「ロックイン」を実際の課題と感じているかにかかっている。フロントエンド開発のデプロイ環境における新たな選択肢として、今後の動向から目が離せない。

出典・参考情報

cloud9 Written by:

Be First to Comment

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です