現代のソフトウェア開発と運用に必要な主要ツールのほとんどが、無料で利用できる時代になった。必要なのは、一昔前ならば考えられなかったほど低い初期コストで、プロフェッショナルな開発・本番環境を構築できることを意味する。これは個人開発者やスタートアップにとって大きな追い風だが、一方で、特定のエンタープライズ機能や保証されたサポートが初期から必須となる大規模プロジェクトにとっては、依然として有償サービスの選択が現実的だろう。
無料で揃う基盤技術の数々
開発環境の根幹をなすOSから、現代的なアプリケーション開発に不可欠なツール群まで、その多くはオープンソースとして無償提供されている。例えば、広く使われるLinuxディストリビューションであるUbuntuやFedoraは無料だ。コンテナ技術のデファクトスタンダードであるDockerも、Community Editionが無料で利用できる。Kubernetes公式サイトによれば、コンテナオーケストレーションシステムのKubernetes自体もオープンソースプロジェクトとして無料で提供されている。
開発のバージョン管理にはGitが、そしてそのホスティングサービスであるGitHubも、公開リポジトリと基本的な機能については無料枠を設けている(GitHubの料金ページを参照)。CI/CDパイプラインを構築するためのJenkins、汎用プログラミング言語のPythonも、それぞれの公式サイトが示す通り、オープンソースの無料ソフトウェアである。
クラウドの無料枠とインフラ構築自動化
環境をローカルだけで完結させず、クラウドを活用する場合でも、主要プロバイダーは新規ユーザー向けに無料利用枠を用意している。AWSの無料利用枠、Google Cloudの無料枠、Microsoft Azureの無料アカウートページによれば、一定の利用量までは無料でサービスを試すことが可能だ。これにより、仮想マシン、データベース、ストレージなどのリソースを実践的に学び、小規模なアプリケーションであれば無料でホストすることもできる。
さらに、こうしたクラウドリソースをコードで管理する「Infrastructure as Code」のツールも無料だ。HashiCorpのTerraformはインフラの構成を、Red HatのAnsibleは構成管理とデプロイメントを自動化する強力なツールであり、いずれもオープンソース版が無料で利用できる。
最先端のデプロイと監視も無償の領域に
継続的デリバリーを実現するGitOpsツールであるArgo CDやFlux CD、そしてモニタリングシステムの代表格であるPrometheusと可視化ツールのGrafanaに至るまで、これらは全てオープンソースプロジェクトとして無料で提供されている。これにより、コンテナベースの現代的なアプリケーションの、高度なデプロイ戦略と本番監視の基盤を、ライセンスコストゼロで構築することが現実的となった。
必要なのは「環境」ではなく「意欲」
これらの事実が示すのは、技術習得やプロトタイプ開発の初期段階における物理的・金銭的障壁が、かつてなく低下したということだ。かつては商用OS、ミドルウェア、開発ツールのライセンスに多額の費用がかかっていたが、現在ではノートパソコンとインターネット接続、そして学習と創造への意欲さえあれば、業界標準の技術スタックに触れ、実践的な環境を構築できる。
これは、これから開発やインフラ構築を学び始める初心者や、限られた資金でサービスを立ち上げようとするスタートアップに絶好の機会をもたらしている。ツールのコストではなく、それらを組み合わせて価値を生み出すアイデアと実行力が、より一層重要になる時代が来ていると言える。
出典・参考情報
- https://kubernetes.io
- https://www.docker.com
- https://git-scm.com/
- https://github.com/pricing
- https://www.jenkins.io/
- https://www.python.org/
- https://aws.amazon.com/free/
- https://cloud.google.com/free
- https://azure.microsoft.com/en-us/free/
- https://www.terraform.io/
- https://www.ansible.com/
- https://argoproj.github.io/cd/
- https://fluxcd.io/
- https://prometheus.io/
- https://grafana.com/
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