インド発フラッグシップLLM「Sarvam-105B」発表、MoE方式で多言語対応


インド発の多言語対応フラグシップLLM「Sarvam-105B」が登場、MoEアーキテクチャで効率と性能を両立

インドのAIスタートアップSarvam AIが、大規模言語モデル(LLM)の新たなフラグシップとなる「Sarvam-105B」と、より軽量な「30B」モデルを発表した。最大の特徴は、インドの22言語にネイティブ対応する多言語性と、MoE(Mixture-of-Experts)アーキテクチャによる効率的な推論にある。オープンソースとして公開される予定で、多言語AIの開発コミュニティに大きなインパクトを与える可能性が高い。ただし、現時点では発表とデモ段階であり、実際のモデル性能の独立検証を待つ必要がある。

MoEアーキテクチャによる「実質9B」の効率化

Sarvam AIが公開した情報によれば、今回発表された「Sarvam-105B」は、MoE(Mixture-of-Experts)アーキテクチャを採用している。これは、総パラメータ数が1050億(105B)であっても、推論時に活性化されるパラメータは約9億(9B)に抑えられる設計だ。従来の密結合(Dense)アーキテクチャのモデルと比較して、同じ規模の総パラメータ数であれば推論速度とコスト効率に優れ、同じ推論コストであればより大規模なモデルを動作させることが可能になる。この効率性が、多言語対応というリソースを多く消費するタスクを実現する基盤となっている。

インドの22言語にネイティブ対応、2つのモデルで用途を分ける

Fortune IndiaやBusiness Todayの報道によれば、Sarvam AIのモデルは英語に加え、ヒンディー語、タミル語、テルグ語、パンジャビ語など、インドで使用される22の言語に対応している。デモではヒンディー語やパンジャビ語での自然な会話が実演されたという。同社は2つのモデルを用途別に設計しており、30Bパラメータのモデルは低レイテンシが求められるリアルタイム会話やチャットアプリケーション向け、105BのMoEモデルは複雑な推論、コード生成、長文の要約・生成などのタスク向けと位置づけている。

ベンチマーク性能とオープンソース化の意義

Sarvam AIは自社のブログ等で、Sarvam-105Bが複数のベンチマークにおいて、DeepSeek-R1やGoogleのGemini Flash 1.5といった強力な競合モデルを上回る性能を示したと主張している。この主張が独立した検証で確認されれば、オープンソースモデルの性能ランキングに大きな変動をもたらす可能性がある。また、同社はこれらのモデルをオープンソースとして公開する予定であることを明言しており、Moneycontrolの報道によれば、Sarvam AIはインド政府の「IndiaAI Mission」にも選定されている。これは、技術の主権(Sovereign AI)を重視するインドの国家戦略の一環としての側面も強く、自国の言語と文化に根差したAI基盤の構築を目指す動きと連動している。

具体的な活用シーンと開発者への示唆

これらのモデルが公開されれば、どのようなことが可能になるだろうか。まず、インドの多様な言語を扱う地域密着型のチャットボットやカスタマーサポートシステムの開発が格段に容易になる。例えば、ヒンディー語と英語を混在させた(コードスイッチングと呼ばれる)会話にも自然に対応できる可能性がある。また、インドの法律文書、地域ニュース、学術論文を現地語で処理・分析するツールの開発にも応用できる。開発者は、公開されたオープンソースモデルをベースに、特定の方言や専門分野に特化したファインチューニングを行うことで、高精度な専用AIを比較的低コストで構築できる道筋が開ける。

既存モデルとの比較と今後の課題

比較の観点から見ると、Sarvam-105Bの主な競合は、同じくオープンソースで高性能な多言語モデル(Llama 3.1やQwen 2.5シリーズ)や、APIで提供されるGPT-4o、Geminiなどのグローバルモデルとなる。差別化の鍵は、インド言語への「ネイティブ」な最適化の深度にある。グローバルモデルも多言語対応を謳うが、リソース配分の関係上、主要言語に比べて低頻度言語の品質は限定的な場合が多い。Sarvamのモデルがそのギャップを埋められるかが焦点だ。今後の課題は、主張されるベンチマーク性能の第三者による再現・検証、そして実際のモデルウェイトとドキュメントがコミュニティに公開されるタイミングである。また、MoEモデルは効率的だが、その分散推論やサービリングには通常の密結合モデルとは異なる技術的ノウハウが必要となる点も、開発者が参入する際の考慮点となる。

まとめ:誰がこのモデルを待つべきか

Sarvam-105Bと30Bモデルは、インドの言語市場に特化したAIソリューションを構築したい開発者や企業にとって、待望の基盤技術となる可能性を秘めている。特に、オープンソースであるため、データのプライバシーを自社内で保持しつつ、カスタマイズしたモデルを開発したいニーズに強く応える。逆に、英語や日本語など主要言語のみで十分な用途や、極めて軽量なモデルを求める場合は、現時点では既存の選択肢を検討するのが現実的だろう。今は、公式の公開を待ち、その性能と実用性を実際に試す段階である。インド発のオープンソースLLMが、多言語AIの新たなスタンダードとなるか、その行方から目が離せない。

出典・参考情報

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