Uniswap Labsが、AIエージェントが直接Uniswapプロトコルを操作するための新たな基盤となる7つの「Skills」をリリースした。これは、開発者がオンチェーンでの自律的なエージェントワークフローを構築するための重要な一歩となる。ただし、現状はあくまで開発者向けのインフラ提供であり、一般ユーザーがすぐにAIエージェントを使って取引できるようになるものではない点には注意が必要だ。
Uniswapの新「Skills」とは何か
Uniswap Labsが公式Xアカウントで発表したところによれば、今回リリースされた7つの新「Skills」は、AIエージェントがUniswapプロトコルのコアアクションを「構造的に」実行するためのインターフェースである。具体的には、トークンのスワップや流動性の提供・削除、ポジションの管理といった、従来は人間の開発者がAPIやSDKを介してコードで記述していた操作を、AIエージェントが理解・実行可能な形で提供するものだ。
この「構造的」という点が重要で、AIエージェントが曖昧な自然言語の指示ではなく、明確に定義されたパラメータと手順に基づいて動作できるようになる。これにより、エージェントの動作の予測可能性と信頼性が高まり、オンチェーンでの複雑なワークフローを自律的に実行させる基盤が整う。
開発者プラットフォームのアップデートと具体的な使い方
今回のSkillsリリースに合わせ、関連する開発者向けプラットフォームもアップデートされている。公式情報によれば、Beta版の提供、APIキーの管理、そしてエージェントワークフローとの統合機能が強化された。これにより、開発者はより容易にAIエージェントをUniswapのエコシステムに組み込める環境が整備されつつある。
具体的な使い方を想定すると、例えば開発者は「このエージェントに、ETH-USDCプールの流動性を定期的に再調整させたい」という目標を設定する。その後、エージェントには「流動性ポジションの確認(Check Position)」「流動性の削除(Remove Liquidity)」「最適な価格帯での流動性再提供(Add Liquidity)」という一連のSkillsを順次実行するロジックを組み込むことになる。エージェントはこれらのSkillsを呼び出し、ブロックチェーン上で実際のトランザクションを発行することで、完全にオンチェーンかつ自律的な資産管理を実現する。
想定される活用シーンと可能性
この技術がもたらす可能性は大きい。第一に、高度に自動化されたデリバティブ戦略やアービトラージボットの構築が、より抽象化されたレベルで可能になる。開発者は細かいトランザクションの組み立てから解放され、エージェントに与える高次の戦略やリスク管理ルールの設計に集中できるようになる。
第二に、個人向けの「DeFi資産管理エージェント」の登場が現実味を帯びてくる。ユーザーが「リスク許容度は中程度で、安定収入を重視する」といったプロファイルを設定すれば、エージェントが最適な流動性プールを調査し、自動で流動性を提供し、収益を定期的に複利投資するといった一連のワークフローを24時間管理してくれる未来も考えられる。
第三に、複数のプロトコルを横断するワークフローの要としてUniswap Skillsが機能する可能性だ。例えば、あるプロトコルで借り入れた資産を、UniswapのSkillsを備えたエージェントが自動で流動性提供に回し、得られた収益で借入金の利息を支払うといった、複数ステップからなる「DeFiレゴ」の自動実行が、一つのエージェントで完結するようになる。
従来のAPIとの違いと業界における位置付け
従来のUniswap APIやSDKは、あくまで「開発者」が直接コーディングして操作するためのツールだった。一方、今回の「Skills」は、その操作主体を「AIエージェント」に明確にシフトさせている点が革新的である。これは、人間とプロトコルの間のインターフェースとして、コードの次に来る抽象化レイヤーを公式が提供し始めたと解釈できる。
現在のDeFi業界において、プロトコル側が公式にAIエージェント向けの構造化インターフェースを提供する例はまだ珍しい。Uniswap Labsのこの動きは、単なる機能追加ではなく、次世代のオンチェーンインタラクションの形を定義しようとする、より大きな戦略の一環と見ることができる。AIエージェントが一般的になる未来を見据え、その際の主要な「行動基盤」としてUniswapプロトコルを位置付けようとする意図が感じられる。
誰がどのように活用すべきか
現時点でこの機能を直接活用できるのは、SolidityやTypeScriptでの開発経験があり、かつAIエージェントフレームワーク(LangChainやLlamaIndexなど)にある程度精通している開発者に限られる。具体的には、DeFiプロトコルの開発チーム、量化取引やボット開発を行う高度な個人トレーダー、あるいはオンチェーン自動化ツールを開発するスタートアップなどが該当する。
一方、一般的なDeFiユーザーがすぐに何かできることはほとんどない。しかし、この動向は注視する価値がある。近い将来、第三者の開発者が、このSkillsを利用して構築したユーザーフレンドリーなAI資産管理アプリケーションをリリースする可能性は十分にあるからだ。その意味で、この発表は、DeFiとAIの融合がインフラレベルで本格化する始まりを告げるサインと言える。
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