AIによる広告制作は、画像生成と動画生成が別々の工程であることが一般的だった。しかし、BananaImg AIが発表した新プラットフォームは、Googleの最新AIモデルを統合し、プロンプト一つで画像から動画広告までを完全自動で生成する「広告工場」を実現した。これにより、小規模な予算でも大量のUGC風広告を量産できる可能性が開かれる一方、従来のクリエイターや代理店の価値は再定義を迫られるかもしれない。
AI広告工場の誕生:Nano BananaとVeo 3の統合
BananaImg AIは、2025年8月26日に新プラットフォームをローンチした。同社のプレスリリースによれば、このプラットフォームはGoogleの「Nano Banana」(Gemini 2.5 Flash Imageモデル)と高品質動画生成モデル「Veo 3」(またはVeo 3.1)をシームレスに統合している。最大の特徴は、一つのワークフロー内で、AI生成画像をそのまま高品質な動画広告に変換できる点だ。ユーザーは、商品を持ったAIインフルエンサーの画像を生成し、それを数秒で動画化、さらに音声や効果音を同期させた完成品を得られる。
完全自動化されたUGC広告制作ワークフロー
具体的な使い方は以下の通りだ。まず、プラットフォーム上で「スマートフォンを持った若い女性が公園で笑っている」といったプロンプトを入力する。Nano Bananaモデルは、この指示に基づき、現実的で商品保持シーンに特化した画像を生成する。次に、この生成画像が自動的にVeo 3に渡され、わずか数秒で動画に変換される。例えば、静止画だった女性が自然に微笑んだり、商品を軽く手に取るような微細な動きが追加される。
さらに、ElevenLabsなどの音声合成ツールと連携することで、動画に合わせたナレーションや効果音を自動付与できる。これにより、クリエイターや撮影スタッフ、編集者を一切介さず、SNS向けの短尺動画広告が完成する。同プラットフォームはbananaimg.aiで提供され、無料プランと商用利用可能なサブスクリプションプランが存在する。
従来ツールとの決定的な違い:一貫性と実用性
これまで、同様の成果を得るには、MidjourneyやDALL-Eで画像を生成し、RunwayやPika Labsといった別の動画生成AIで動画化するという、複数ツールをまたぐ煩雑な工程が必要だった。各工程でプロンプトの調整や素材の形式変換に手間がかかり、一貫性のある出力を得るのは熟練を要した。
BananaImg AIのプラットフォームは、この断絶を解消した。画像生成の段階から動画化を前提とした最適化がなされており、特に「人物が商品を持つ」という広告で最も需要の高いシーンを高い品質で生成できる点が実用的だ。これにより、数百本単位での広告バリエーション制作や、ABテストのための素材大量生成が、コストと時間を大幅に削減して可能になる。
誰が使うべきか?具体的な活用シーンと注意点
この技術は、SNS広告やUGC風広告を大量に、かつ低予算で回したいマーケターやスタートアップにとって強力な武器となる。例えば、新商品の発売に合わせて数十種類のインフルエンサー起用風動画を即座に作成し、どのデモグラフィックに反響が高いかをテストするといった使い方が考えられる。
一方で、既存のクリエイターや代理店との協業関係を重視する企業や、ブランドイメージが厳格に管理された高級品の広告、高度なストーリーテリングや芸術性を求めるプロジェクトには現時点では不向きと言える。AI生成コンテンツ特有の「違和感」や、倫理的・著作権的な課題に対する懸念が完全に払拭されたわけではないためだ。
広告産業の「自動化」が次の段階へ
BananaImg AIのプラットフォームは、単なるツールの進化ではなく、広告制作のサプライチェーンそのものを変革する可能性を示している。クリエイティブの「量産」が個人や小規模チームでも可能になれば、広告予算の配分や代理店の役割、ひいてはインフルエンサーマーケティングの経済構造にも影響を与えかねない。
AIが担うのは反復的で大量の素材制作であり、人間のクリエイターは、戦略の立案や、AIでは生み出せない革新的なアイデアの創出といった高次元の価値提供に集中する未来が近づいている。この「AI広告工場」は、その過渡期を象徴する存在と言えるだろう。
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