CircleがAIエージェント向けUSDCハッカソンを開催、賞金総額3万ドル
安定コインUSDCを発行するCircleが、AIエージェントが自律的に参加・開発・投票するという、これまでにない形式のハッカソンを開催する。賞金総額は3万USDCで、提出から審査までエージェントが主役となる点が画期的だ。ただし、このイベントは自律型エージェントの実装に既に携わっている開発者やチーム向けの実践の場であり、従来型のハッカソンを期待する一般参加者には敷居が高いかもしれない。
自律型エージェントが主役の「エンド・ツー・エンド」ハッカソン
Circleの公式ブログによれば、今回のハッカソンは「エンド・ツー・エンドでエージェントが駆動する」ことが最大の特徴だ。つまり、プロジェクトの企画、コードの記述、提出物の作成、さらには他の参加プロジェクトへの投票まで、一連のプロセスを人間の手を介さずに自律型AIエージェントが行うことを想定している。賞金であるUSDCもオンチェーンで移動するため、エージェントによる自律的な経済活動の実証実験としての側面が強い。
対象となるのは、OpenClaw robots、Clawdbots、Moltbots、そしてその他のAIエージェントだ。これらは特定のプラットフォームやプロトコルと連携し、自律的にタスクを実行するエージェントを指す。イベントはMoltbookプラットフォーム上の「m/usdc submolt」で行われ、締め切りは2月8日正午(PST)となっている。
3つのトラックと具体的な参加方法
ハッカソンでは、以下の3つのトラックが設定されている。参加エージェントは、いずれかの分野で優れた能力を発揮するプロジェクトを提出する。
1. Agentic Commerce(エージェント商取引)
このトラックでは、AIエージェントが自律的に商品やサービスを発見、評価、取引するためのスキルやコントラクトが評価される。例えば、特定の条件(価格、在庫、配送日数)を満たす商品をネット上で探し出し、決済から注文までを完結するエージェントの実装が考えられる。USDCを用いた実際の決済フローをどう組み込むかが鍵となる。
2. Best OpenClaw Skill(最高のOpenClawスキル)
OpenClawエコシステムの機能性を拡張する、汎用性の高いスキル(機能)を競う。これは、他のエージェントからも利用可能なツールやAPI連携を開発するイメージだ。例えば、複雑なDeFiプロトコルのリスク分析を自動化するスキルや、複数のデータソースを統合してレポートを生成するスキルなどが該当する。
3. Most Novel Smart Contract(最も新奇なスマートコントラクト)
ブロックチェーン上で動作するスマートコントラクトの新規性と独創性を競うトラックだ。AIエージェント同士の契約の自動履行、条件付き報酬の分散型分配システム、あるいは従来にはないガバナンスメカニズムなど、技術的な革新が求められる。
参加方法は、エージェント自身がMoltbook上の指定されたチャンネル(m/usdc)でルールを読み、プロジェクトを自律的に提出する。審査にはコミュニティ投票(これもエージェントによる投票が含まれる)と最終審査が組み合わされる。
従来のハッカソンとの決定的な違いとその意義
このイベントは、単なる「AIをテーマにしたハッカソン」ではない。参加主体が「人間チーム」から「自律型AIエージェント」そのものに移行した、次世代の開発コンテストの先駆けと言える。エージェントが自ら投票する点は、将来的な分散自律型組織(DAO)におけるAIエージェントのガバナンス参加を想起させる。
実用的な観点から見れば、これはAIエージェント開発者にとって貴重な実践テスト環境を提供する。開発したエージェントを、賞金(USDC)という実際の経済的インセンティブが動く場に投入し、その挙動や堅牢性を検証できる。ネットワーク接続、API呼び出し、オンチェーン取引、他エージェントとの(擬似的な)競合など、シミュレーション環境では再現が難しい実世界のノイズの中でエージェントを試す機会となる。
誰が参加すべきか、どう活用すべきか
このハッカソンは、以下のような開発者やチームに特に価値がある。
- OpenClawやMoltbookエコシステムの既存開発者: 自身が開発するエージェントの新スキルを実戦投入し、有用性を証明する絶好の機会となる。
- 自律型エージェントの実装経験者: LangChain、AutoGPTなどのフレームワークを用いた実装経験があり、より実世界に近い環境でエージェントをテストしたい技術者。
- DeFiとAIの融合領域に興味がある研究者/開発者: ブロックチェーン上の資産をAIが自律管理するユースケースを、小規模だが実用的な形で構築できる。
一方で、AIエージェントの開発に不慣れな場合や、従来のように人間がアイデアを出し合い、コーディングする形式を期待する場合は、参加よりもむしろ観察者としてこのイベントの成果をウォッチする方が有益だろう。ここで生まれるプロジェクトや相互作用は、今後ますます現実味を帯びてくる「エージェント経済」の初期の萌芽となる可能性が高い。
Circleが主催し、賞金をUSDCで提供するということは、同社が単なる決済インフラではなく、AIとブロックチェーンが交差する新たなエコシステムの構築に積極的に関与していることを示すシグナルでもある。このハッカソンは、技術的な挑戦であると同時に、未来の経済活動のプロトタイプを社会に提示する実験の場なのである。
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