一枚絵から曲・動画まで、Suno v5と画像AIを連携させたクリエイターの制作例
音楽生成AI「Suno」の最新バージョン「v5」がリリースされ、最大8分の楽曲生成と12ステムでのエクスポートが可能になった。これにより、動画制作のBGM作成など、実用的なクリエイティブワークフローへの組み込みが一気に現実味を帯びてきた。実際、Twitter上では、画像生成AIで作った一枚絵を起点に、Suno v5でBGMを生成し、動画まで仕上げるという、複数の生成AIをシームレスに連携させた制作例が注目を集めている。Suno v5は高品質なオリジナル音楽を瞬時に生み出す強力なツールだが、音楽制作の細部まで完全にコントロールしたいプロユーザーにとっては、DAW(デジタルオーディオワークステーション)の代替というより、アイデア出しや素材生成のための補助的なポジションにあると言える。
Suno v5の主な新機能:長尺化と実用的な出力
2025年9月23日にリリースされたSuno v5は、音楽生成AIの可能性を大きく広げるアップデートとなった。公式ブログによれば、最大の特徴は生成可能な楽曲の長さが8分まで拡張された点だ。これまでのバージョンでは数分単位が主流だったため、動画のBGMやある程度展開のある楽曲制作において、大きな制約となっていた。8分という長さは、多くの動画コンテンツやポッドキャストのBGM需要をカバーするのに十分な時間だ。
もう一つの重要な機能が、最大12のステム(個別の音源トラック)でのエクスポートに対応したことである。Musicmanの記事によると、これはボーカル、ドラム、ベース、ギターなどのパートを分離して出力できることを意味する。動画編集においては、シーンに合わせて特定の楽器の音量を下げたり、フェードアウトをかけたりする後処理が格段に容易になる。単に完成形のミックスダウンされた音源(ステレオファイル)を出力するだけではなく、編集可能な状態で素材を提供できる点が、クリエイターにとっての実用性を高めている。
また、音質の向上も図られており、より自然で深みのあるサウンドが生成可能となった。利用方法は、簡易な「Simpleモード」と、より詳細な設定が可能な「Customモード」が用意されており、テキストプロンプトから楽曲を生成する。インストゥルメンタルのみの生成にも対応しており、動画のBGM需要に直接応えられる形だ。
実例:画像AI × Suno v5 × 動画編集の連携ワークフロー
これらの新機能が、実際のクリエイティブプロセスでどのように活かされるのか。一つの具体例として、Twitter上で共有された「一枚絵から動画まで」の制作フローを追ってみよう。このワークフローは、複数のAIツールを用途に応じて使い分け、最終的な動画アセットを制作するものだ。
ステップ1:画像生成AIでビジュアルの起点を作成
まず、画像生成AI(Stable Diffusion、Midjourney、DALL-E 3など)を用いて、動画の世界観を決定づける「一枚絵」を生成する。これは、これから作る楽曲や動画のムード、テーマを視覚的に定義する重要なステップとなる。クリエイターは、ここで得られた画像の印象から、次に生成する音楽の方向性を考えることになる。
ステップ2:Suno v5で世界観に合ったBGMを生成
生成した画像をインスピレーションの源として、Suno v5にプロンプトを入力し、BGMを生成する。例えば、幻想的な夜景の画像であれば、「ethereal, cinematic, ambient, slow tempo, orchestral pads, with a sense of wonder and mystery」といったプロンプトが考えられる。v5の長尺生成機能により、動画の尺に合わせた長さの音楽を一気に作り出せる。さらに、12ステム出力を活用すれば、後で映像の切り替わりに合わせてドラムのフィルを強調するなどの調整も可能だ。
ステップ3:マルチショット画像の生成と動画編集
次に、最初に作った一枚絵を元に、別のAIツール(例では「nanobananapro」が使用された)を用いて、同じキャラクターや世界観を保ちつつ角度や構図の異なる複数カット(例:9カット)の画像を生成する。これらを連続して表示することで、あたかもカメラが動いているような、動的な映像素材を準備する。最後に、これらの画像シーケンスとSuno v5で生成したBGMを動画編集ソフトで組み合わせ、必要に応じてトランジションやエフェクトを加えることで、短いが完成度の高い動画コンテンツが仕上がる。
この一連の流れは、各工程で異なる生成AIの強みを最大限に引き出し、個人のクリエイターが少ないリソースでマルチメディアコンテンツを生産するための新しいパラダイムを示している。
Suno v5の位置づけと活用シーン
このようなワークフローから見えるSuno v5の強みは、スピードと特定用途への特化にある。動画クリエイターやコンテンツマーケターが、特定のムードに合ったオリジナルBGMを、ロイヤリティフリーの音楽サイトで延々と探したり、高価な楽曲をライセンス購入したりすることなく、数分で生成できる点は革命的だ。また、スタートアップのプロモーション動画や、個人制作のゲームのサウンドトラックなど、予算や時間が限られるプロジェクトにおける強力な味方となる。
一方で、セプテニ・ホールディングスのFocus記事が指摘するように、生成AIはあくまで「確率的な創作」であり、特定のコード進行や細かい音楽理論に基づいた完全にコントロールされた制作には向かない。プロの作曲家やサウンドデザイナーは、Suno v5で生成した素材をトリガーや下地として利用し、DAW上でさらに加工・発展させるという併用が現実的な活用方法だろう。v5のマルチステム出力機能は、まさにそのようなプロのワークフローに組み込むことを意識した進化と言える。
まとめ:誰がSuno v5を使うべきか
Suno v5は、動画制作者、ポッドキャスター、SNSコンテンツクリエイター、インディーゲーム開発者など、「高品質なオリジナル音楽を迅速に、かつ低コストで必要とするすべての人」に刺さるツールだ。特に、画像生成AIなど他の生成AIツールをすでに活用しているクリエイターにとっては、そのワークフローに自然に統合できる最後のピースとなり得る。
逆に、音楽制作そのものが主目的で、細部まで完全な創作意図を反映させたいプロフェッショナルは、その限界を理解した上で、アイデアスケッチや素材生成のための「刺激的なコラボレーター」として接する姿勢が求められる。Suno v5のリリースは、AIがクリエイティブの「民主化」を推し進める一里塚であり、単体のツールとしてではなく、連携する複数ツールのエコシステムの中で、その真価が発揮され始めている。
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